もうずっとずっとずっと前、 帰らなければならないのにその人のベッドで私だけ寝てしまって、 もう夜中を過ぎた頃、ふと目を覚まして首だけ起こして振り返った。
その人は、時間に追われて 枕もとと入り口との間の壁に沿わせた机に向かっていた。
うすぼんやりと暗い、狭い部屋の中で一つだけ白く明るい机の上のライトの前で、 コンタクトをはずしたその人は度の強い眼鏡をかけて 考えをめぐらす角度になっていた。
私が起きたのに気づくと、 子供をぐずらせまいと何よりもまず機嫌をとる親のように 慌てて鉛筆を置いてベッドの縁に座り、 また私を眠らせようとした。
たぶん、私の中に物心ついた頃からずっとある喪失感は あのベッドのような場所で どちらかが死ぬまではあの安心感が約束されている気になれたなら 取り払われることもあるのかもしれない、と 昨日のゆうがた思った。
2003.6.11 |
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