モッツァレラチーズとコンビニのワイン

〜思考試行錯誤〜

 

モッツァレラチーズにバジルと生ハムが巻いてあるやつを買った。
ざくざくと輪切りにして、コンビニのワインを飲みながら食べた。

飲み食いしながらテレビをつけたら、20年だか30年だかの間ずっと
二階家の中にゴミを溜め込んでゴミと生活していた女性の
番組をやっていた。

こうなりたくてなったわけじゃないという根底の意識と、
ナリフリかまわない”変わり者”となってしまっている現実。

全てを失った過去のある時点から
失うということが怖くて物が捨てられなくなってしまったという、
意識の底に凍りつかせた発端を見つめて他人に語ろうと決意させたのは
ずっと彼女の中で這い出したがっていた彼女自身であって
それは当たり前にゴミをゴミとして汚がる”フツウ”の人たちと少しも変わらない。

発端の記憶につながるモノがしまいこまれていた
二階の奥の奥の部屋から、ゴミは溜まり始めた。
心が淀み、部屋の気が淀み、それが具現化するように
あの部屋はモノで覆われていったんだろう。

触れたくない、消したい、でも捨てられない、捨てたくない、でも消えてほしい、
忘れたい、変わりたい、でも変えられない、本当はこうじゃない、・・・・・、

絡んでもつれた意識のいくつもの螺旋が
互いをがんじがらめにしてしまってとれなくなった知恵の輪のように
あの空間の中に渦巻いていたはずで、彼女はそのぐちゃぐちゃになった螺旋に
まるで蜘蛛の巣にからめられた蝶のように足をとられて
身動きとれずにずっともがきつづけていたんだ。

私にはその螺旋たちまでが見えるようで、
あたしはどこを向いても一人だからね、と言った彼女の言葉がやりきれない。

ゴミを片付け、文字通りボロボロになった家のリフォームもして
テレビ番組としての企画が終わり、関わった人たちが帰っていく時になっても
彼女はゴミを片付けていて仲良くなった出演者の手を離さない。

今からあなたは仕事なんだから仕方がないと、自分に言い聞かせる。
出演者が思わず「じゃあ、行ってきます。」と言った。

「行ってらっしゃい。」
何回も言う。

表に出て、いつまでもいつまでも手を振って見送りながら
「行ってらっしゃい。」
何回も何回も言いつづける。

何十年ぶりで口にした言葉だろう。
これだけは、一人っきりではぜったいに口にできない言葉なんだ。


バラエティ番組の企画も時々行政の力では出来ないようないいことをする。
おかげでワインを飲みすぎてしまった。


                                       2003.3.28

 

 

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