理想郷

〜思考試行錯誤〜

 

ささらほうさら。バーバラ村田。加納真実。

10月下旬の東京の空の下、私は垣間見てしまいました。

こんな世界もあったんだ、という感覚は、
12、3歳の頃にラジオのつまみをAMからFMに変えてみたときのあの”発見”感に近い。

しょうもない喩え方に見えるでしょうが、私にとっては、
雑然とした日常と並行したところにこんな静かでわが道を行くかっこいい世界があったのか、
っていう、しかも、
自分を少しひっぱってくれそうな大人の世界がでしゃばらずに存在していたことに気づけたっていうような、
今思えばFM放送を美化しすぎてるけれど、
子供にとっては初めて出会えたとてもうれしい衝撃だったもので。


まあそういう意味なんだ。


彼女らは皆、自分の内を搾り出すというか、
搾り出して、ほら、あたしはこんなんだけどあんたはどう?と
突き刺してくるというか、
いつのまにかこちらの内を引きずり出しに来るというか、
オノレの内を見つめて見つめて見つめてメビウスの輪のように
人に見える外にたどり着いている。

その挙句に人を楽しませてしまっている。

ほんとうに淋しいことや痛いことを、確実に知っている人たちだとわかる。
経験してなのか本能的になのかは知らんしどうでもよいことだろう。

勝手に同類化して申し訳ないし、すべてを括るのはよくないし
ましてやそこに勝手に自分も入れてしまうなんてもってのほかだけれど、
確実に私は、この人たちの人前での表情や体の動かし方や視線の中に
たったひとりで自分の内を睨みつけるように見据え続けている時間の長さを感じ、
その時間を人々につなげようともがいているような振動を感じて
ざわざわとした感情を掻き立てられ、

うるうるとしてぐっときて泣きたくなったり
言葉をなくして握手を求めるだけになったり
黙って立ち去るだけになってしまったり

あたしはもし毎日毎日こういう人たちに搾り出され続けて
へらへらしたり泣いたりできてその勢いで走り回ったりしていられれば
べつに歌っていなくてもいいような気にさえなった。
歌わなくてもいいというのは、ある意味とても幸せな理想郷である。


                                       2004.10.31

 

 

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