| 桜の頃に
〜思考試行錯誤〜 |
| 髪の毛の伸びる速さで遠ざかる 傷口からの距離 往生しなっせ 角砂糖の白い器の中のこと お湯をちょうだい シロップになれ! 凹凸の呼びあうドラマばかりなり 眼も真心も躯も閉じぬ 「哀しい」と言葉にすれば 哀しみは言の葉を抜け廻りぬ カラリ・・・ 赤と青 まじわりて弾き合いながら ねじれの位置で 赤と青なり 桜の頃にあなたと別れて 桜の頃の濡れた風の中 しづ心なく散る花を 惜しむ心を取り戻して 来年の答はいくらでもあるけれど 去年からの答は一つしかない 今ここに私がいるだけのこと まるで散るために咲いたかのような桜の花花が 風の輪郭を教えるように ひらひらひらりと 散るために咲く美しさ 風の輪郭を飾る潔さ 桜の枝の下に立って 敷きつめられた花びらを 今一度巻き上げる名残風に 若い月の輝く支度 嫌なことを言われたり 分かってもらえなかったり 電話の無い電話ボックスに 閉じこめられてでもいるような そんな夕方 まだ明るくて涙も見えてしまうし 泣きつけるような人もいない 急にチャゲあすが聴きたくなって 髪を少しかきあげて息を吐いた 嫌なことが多すぎて でも こんなもんだなんて思いたくなくて 少し好きな自分の髪の色と指の形だけ 眺めていることにして 雑誌を開いては ふだんは読みとばすページまで ゆっくりと読む 夜は随分冷えたらしくって 水滴の流れた窓硝子が 朝には曇った縦縞模様 こっちの方がまるで、あやしてもらっているようで。何かはずかしい。 花の咲く季節が嫌で嫌で 眩しさがただ羨ましくて いつも羨ましいばっかりで 誰か 誰か 大人はどうして泣かないのかと いつもいつも不思議だった 泣くことが無いんだとばかり思っていた 大人になれば悲しみなど 全て消えると 信じていたという 同じ心の人にひかれたこの悲しみは 春の澄んだ空に 無くてもいいような意味を ぺたぺたとはりつける ずっとずっと笑ってばかりで 暮らせますように もう死んだ様な眼で 愛想笑いをするようなことはなく 意外なところでまた誰かが この瞳が輝くのを待っていてくれるから だから今から 当たり前の歌が聴きたくなった 当たり前の、分かりきった歌が 死んだように道ばたに寝ころんで 世間をなめている暢気な野良犬達のように 少しくらいふてぶてしく 好きなときに欠伸でもして 尻尾の生えたズボンを穿いて歩こう わけなんて後からついてくる 偉い人になりさえすれば ごみの日の粉雪の福袋の赤 夢二の絵に潤む夜半の猫の恋 |